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コラム「南風」より・第5回「ゆったりした言葉」

 五月八日はゴーヤーの日です。沖縄ではゴーヤーとヤを伸ばして発音、表記しますが食品成分表では「ゴーヤ」と表記されています。

 数年前、NHKテレビで沖縄特集があり、その時「ゴーヤーンブシー」が紹介されていました。ンブシーは最近はあまり作られなくなった料理ですが、野菜を主体に豆腐、豚肉をみそで煮込んだ料理です。通常発音通りに「ゴーヤーンブシー」と表記するのですが、その時の画面は「ゴーヤンブシー」と表記されていました。そしてなんとアナウンサーが「ゴー・ヤンブシー」といっているではありませんか。標準語には「ン」から始まる言葉が多分ないでしょうし、伸ばして発音するものも少ないのだと思います。ゴーヤーをゴーヤと表記してあったので、耳から入った言葉でなく、文字から読むと「ゴー・ヤンブシー」といわざるを得なかったのでしょう。

 その逆に、ある雑誌に山本彩香さんの料理が「ゴーヤーチャンプールー」とプーを伸ばして出ていました。「チャンプルー」の誤植かと思ったのですが、年の為にと思い古老に問い合わせたところ、昔は「チャンプールー」とプーを伸ばしていたとのことでした。古老の口から出たチャンプールーの響きはなんとものどかでゆったりしたものでした。

 沖縄にはゴーヤーのように伸ばして発音する言葉がたくさんあります。サーターアンダギー、ターンム、ジーマーミ、ヒラヤーチー、アカバナー、サーフーフー、アチコーコーなどなど。でも、時代とともに言葉は短くなっていくような気がします。沖縄は言葉も時もゆっくり流れ、こころが癒される。それを沖縄のよさとして守っていけたらいいなと思います。

安次富 順子

  • 那覇高15期卒。
  • 沖縄の食文化研究家
  • 沖縄調理師専門学校(校長)
  • 王朝菓子、冊封使料理の再現。ブクブクー茶の再現と普及活動。著書に『ブクブクー茶』など。


  • コラム「南風」(琉球新報掲載)より転載いたしました。
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