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コラム「南風」より・第1回「帰ってきたブクブクー皿」

 沖縄にはブクブクー茶という白い豊かな泡を飲むお茶があります。戦前は那覇だけで、それも東町、西町、泉崎などごく限られた地域でのみ飲まれていました。戦後のほんのいっとき那覇の牧志の市場で売られていたようですが、まもなく廃れてしまいました。 それからずっと姿を消し、「幻のお茶」とまで言われるようになりました。そのブクブクー茶が現在は沖縄独特のお茶として復興しています。

 復興は、一組のブクブクー皿(木鉢)と茶せんから始まりました。ブクブクー茶をたてるのに、直径25センチ、深さ13センチのブクブクー皿と長さ22.5センチの茶せんが使われます。これらの道具はほとんどが戦争で焼失してしまいました。

 明治28年生の故新嘉喜貴美さん(那覇の旧家の出身)は戦前家でよくブクブクーをたてておられましたが道具を戦争で焼失してしました。新嘉喜さんは著名な歴史研究家の東恩納寛惇先生と大変親しく、戦前道具を一組プレゼントしていました。昭和33年ごろ新嘉喜さんの道具が焼失したことを知った東恩納先生は「私が持っているより新嘉喜さんが持っている方がいい」と道具を新嘉喜さんに返しました。

 この道具でブクブクー茶が再びたてられるようになりましたが、昔のような立派な泡はなかなかたちませんでした。昭和59年になって、私の母、新島正子がブクブクー茶を復興させなければと、この道具を借り同じ寸法の道具をいくつか復元させました。新嘉喜さんのものは桑の木、復元したのはヤラブの木で出来ています。復元された道具により研究が進み硬度の高い水でいい泡がたつことが分かり、ブクブクー茶が蘇りました。

安次富 順子

  • 那覇高15期卒。
  • 沖縄の食文化研究家
  • 沖縄調理師専門学校(校長)
  • 王朝菓子、冊封使料理の再現。ブクブクー茶の再現と普及活動。著書に『ブクブクー茶』など。


  • コラム「南風」(琉球新報掲載)より転載いたしました。
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